研究概要 |
出芽酵母の生育に必須なクロマチンリモデリング因子RSCは15のサブユニットからなり、細胞周期のG2/M期の進行に必須な役割を果している。我々は、RSCこの複合体の活性サブユニットをコードするNPS1の温度感受性変異株の解析により、RSC複合体が、増殖に伴うセントロメア等の染色体の特定部位での染色体高次構造の形成・維持に働いている事、この複合体の細胞周期における作用時期がS期後期からG2期である事、減数分裂過程にも必須である事などを明らかにしてきた。従って、本因子は酵母の増殖・分化における染色体高次構造形成に極めて重要な役割を担っていると考えられる。本研究は、Nps1蛋白、RSCの機能構造の解析、細胞増殖・分化に伴う染色体高次構造形成・維持におけるRSCの機能解析、及びRSCと染色体複製装置や分配装置等との機能的連携機構の解析を行い、真核細胞における染色体機能調節機構を明らかにする事を目的としている。 本年度の研究では、(1)Nps1蛋白の機能構造の解析、(2)Nps1蛋白と相互作用する細胞内因子の同定、(3)減数分裂におけるNps1蛋白の機能解析を目的として研究を行った。この結果、(1)NPS1の新たな変異体の探索とその解析により、Nps1蛋白中に2つの活性調節部位の存在を見い出した。(2)Nps1蛋白の正、並びに負の制御因子の同定を目的として、nps1変異と合成的に致死性を示す変異株、並びにnps1変異の抑圧変異株の取得と解析を行った。RSCの合成致死株については、紫外線照射による変異誘発後、生育した約3万のコロニーより、45の候補株を得、現在これらの相補性試験を行っている。nps1変異の抑圧変異株については、自然復帰変異で変異形質が回復したもの約10,000株より、最終的に9種の独立した単一変異株を確立した。現在これらの変異の原因遺伝子のクローニングを行っている。(3)減数分裂過程におけるNPS1の機能は、減数分裂初期遺伝子群の転写活性化であることを明らかにし、現在活性化機構の詳細を解析している。
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