研究課題/領域番号 |
11240201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大西 淳之 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40261276)
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研究分担者 |
大西 英理子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 客員研究員
澤 洋文 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (30292006)
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キーワード | MMP-23 / ECM分解 / 顆粒膜細胞 / 排卵 / 閉鎖卵胞 |
研究概要 |
ラット卵巣におけるマトリックスメタロプロテアーゼ-23(MMP-23)の機能を検討する目的で、卵巣被膜下に抗MMP-23抗血清を注入し排卵への影響を調べた。その結果、未処理のコントロールおよび正常血清を注入したラットの排卵数に比べて、抗MMP-23抗血清を注入した群では最大50%程度の割合で排卵が阻害された。精製した組換え体ヒトMMP-23が変性I型コラーゲンやフィブロネクチンを切断する活性を有しており、この分解活性は上記で用いた抗MMP-23抗血清により特異的に阻害されることを考慮すると、MMP-23の機能が細胞外マトリックスの代謝を介して排卵の過程に関与している可能性を初めて提示した。 これまでに未成熟の顆粒膜細胞で発現しているMMP-23が、卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用により、その発現が抑制されることを明らかにした。このMMP-23の発現抑制には新規のタンパク合成を必要とせず、FSH刺激で亢進されるcAMP産生を介したホスファチジル3キナーゼ(PI3キナーゼ)とAキナーゼ(PKA)の活性化が関与していた。ここで用いた培養系ではFSH存在下で顆粒膜細胞を48時間培養すると排卵前の分化状態へ、また72時間培養を行うと黄体化初期の状態へ分化を誘導することができる。それぞれの分化状態からFSHを除去して培養を行うと、いずれの場合もカスパーゼ活性化経路によりアポトーシス様の形態変化を起こした。この時FSHの作用により抑制されていたMMP-23の発現が新規のタンパク合成を介してカスパーゼ経路とは独立の機序により誘導されることを見いだした。PI3キナーゼ活性化経路が細胞の生存に必須であることを考慮しながら顆粒膜細胞でのMMP-23の発現調節に注目すると、正常卵胞における顆粒膜細胞でのMMP-23の発現抑制の系とは逆に、閉鎖卵胞形成時には顆粒膜細胞の変性とMMP-23の積極的な発現が平行して誘導されることを示唆しており、このMMP-23の発現誘導は細胞の生存状況に依存したものと予想される。
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