研究概要 |
1,MT1-MMPノックアウトマウスにおいては、骨形成不全に伴う成長障害、コラーゲン代謝異常などの表現型が報告されている。この骨形成不全ではどの細胞が深く関与するかなど、詳細な機構は明らかにされていない。そこで同ノックアウトマウスの骨組織にコンデショナルにMT1-MMPを再発現させ、表現型の回復度を検討する。現在、骨形成時特異的なプロモーターの下流にMT1-MMP-cDNAを組み込んだtransgene constructを構築している。 2,MT1-MMPはコラーゲン、フィブリン内への血管新生に重要な役割を演ずることが報告され、同ノックアウトマウスにおいても、網膜での血管新生に異常をきたす報告がある。この機構をさらに詳細に検討するため、マウスの筋肉片をもちいた、3D-コラーゲン内培養系における血管新生を解析している。MT1-MMPヘテロ接合マウスを用いると、ターゲティングしているMT1-MMP-ORF領域に挿入されたlacZ遺伝子の活性をMT1-MMPのプロモーターの活性下に追うことでMT1-MMPの発現を予測することが可能であり、この系をもちいて管腔形成部に一致したβ-galactosidase活性を確認した。 現在このMT1-MMPの発現細胞の同定と、この血管新生の制御を目指している。 3 MT4-MMPは血管系、神経系を中心に恒常的に発現していることが示唆されるが、MT4-MMPノックアウトマウスを用いて、MT1-MMPと同様にlacZ stainingの発現パターンでは、前頭葉皮質、海馬、小脳の一部、臭球、腎臓のネフロン系、血管平滑筋、心筋、赤脾髄の顆粒球細胞などに発現を疑わせる濃染部が確認された。現在、これらの部位において、明らかな形態異常は指摘されない。 過去の報告では活性化Macrophageに発現を認め、TNF-αの切離、フィブリン分解に関与することが示唆されているが、これを踏まえ、同ノックアウトマウスより単離した血球系細胞の遊走能、貧食能等を細胞レベルで解析中である。 4 MT5-MMPは大脳に特異的に発現する膜型プロテアーゼとして報告されている。 MT5-MMPノックアウトマウスでの発現は、大脳、小脳、海馬を中心に神経系で特に高い分布を示したが、現在まで、形態学的な異常は観察されていない。MT5-MMPは神経細胞有意に発現することが示唆されるため、細胞の運動に関与することを想定して、脊髄後根神経節(DRG)を用いた、神経軸策伸長モデルを立ち上げた。このモデルでは、軸索の伸長はラミニンコート上で誘導され、脳特異的な基質であるプロテオグリカンの存在下では抑制される。この系に外来性に活性型MT5-MMP(可溶型)を添加することで、この伸長抑制が解除され、再び軸策伸長が誘導されることを見出した。現在このDRGモデルをMT5-MMPノックアウトマウスにおいて検討中である。
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