ADAMTS-1は、トロンボスポンジン(TSP)タイプIモチーフを持つADAM型メタロプロテアーゼである。ADAMTS-1はプロテオグリカン分解活性を有するメタロプロテアーゼである一方、血管新生抑制因子でもあることから、本研究では、ADAMTS-1の腫瘍増殖および転移に及ぼす効果について検討した。まずLewis Lung carcinoma (LLC)でADAMTS-1を高発現する安定形質導入株を樹立し、マウス皮下に移植して腫瘍増殖を調べたところ、全長ADAMTS-1のLLC高発現株では、コントロール群と比較して腫瘍サイズの増加と移植後21日目の腫瘍重量の増加が認められた。また同様にADAMTS-1を高発現するChinese hamster ovary (CHO)細胞株を用いた場合も同様に、腫瘍増殖促進作用が認められた。一方ADAMTS-1のうちTSPタイプIモチーフを含むC末端側領域のみを高発現するCHO細胞株を皮下移植した場合、逆に腫瘍増殖が抑制されることがわかった。このことから、結果的にADAMTS-1は腫瘍増殖に関して2つの相反する作用を有することがわかった。さらに、LLCのADAMTS-1高発現株をマウス尾静脈に移植した場合、コントロール群と比較して顕著な肺転移数の減少が認められた。このことから、ADAMTS-1は血管内侵入以降のがん転移過程を抑制すると考えられる。これらの結果から、ADAMTS-1が発現する腫瘍では、ADAMTS-1がその増殖能、転移能に影響を及ぼす可能性が強く示唆された。
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