出芽酵母DNAポリメラーゼε(Polε)に固有の機能を知る目的でそのアクセサリーサブユニットの生化学的機能の解析を行っている。これまでにPolεが通常のDNAポリメラーゼには見られない本鎖DNA結合能を有すること、およびPolεの部分複合体Dpb3p-Dpb4pがこの活性を担うことを示した。この複合体はヒストン様のヘテロ量体であり、Polεとクロマチンの相互作用に関わることが示唆される。平成14年度は以下のことを明らかにした。 (1)Dpb3-Dpb4およびPo1εの二本鎖DNA結合能の基本的解析-Dpb3p-Dpb4p複合体の二本鎖DNAに対する結合の結合定数の測定、KC1感受性、ATP/Mg^<++>依存性を調べた。またこの二本鎖DNA結合はDNAの末端に対する結合ではないこと、塩基配列特異性がないことを明らかにした。 (2)変異型Dpb3p-Dpb4p複合体の分離-Dpb3p-Dpb4p複合体およびPolεの本鎖DNA結合能の細胞内での役割を明らかにする目的で、複合体形成能を保持したまま、DNA結合能を失うことを指標にdpb4変異を2つ作製した。これらの変異型Dpb4pと野生型Dpb3pは安定な複合体を形成し、そのDNA結合能はそれぞれ野生型の50%および10%に低下していた。 (3)Polεを迅速かつ大量に精製する方法の確立-酵母細胞よりnativeのPolεを精製するこれまでの方法は時間と労力が甚大な上、その収量が少なく、複数の変異型Polεを精製し、解析を行う目的には適さない。そこで、染色体上のDPB3遺伝子に切断可能なFLAGtagを導入し、FLAG抗体カラムを用いて精製を行う方法を確立した。この方法により従来のPolεと比活性を同じくするPolεをほぼ一日の行程で収率よく得ることができるようになった。
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