複製開始と細胞周期を抑制する染色体複製装置の構造と機能

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11241204
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 片山 勉 九州大学, 薬学研究科, 助手 (70264059)
• キーワード: 染色体 / DNA複製 / ATP / DnaA / DNAポリメラーゼ / スライディング・クランプ / 複製開始 / 細胞周期

研究概要

本領域では、大腸菌の複製開始因子DnaA蛋白質がDNAポリメラーゼIIIとの相互作用により不活性化される機構(RIDA)を主に解析している。本年度は、まず、同調培養細胞を用いて、in vivoでも複製周期と共役したDnaA蛋白質の活性フォーム(ATP/ADP結合型)の変換が起こり複製開始後に不活性型に移行することを明らかした(Kurokawa et al.,EMBO J.,1999)。ATP型DnaAからADP型DnaAへの変換反応は染色体DNA複製に依存していた。これは既に発見していた「DNA上へロードしたDNAポリメラーゼ」のβクランプとDnaA蛋白質との相互作用」というin vitro解析の結果と良く一致する。また、RIDAの分子機構を解析し、DnaA蛋白質とβクランプとの相互作用には、ある長さを持った2重鎖DNA領域が必要であることがわかった。これはプライマー上にロードされたβクランプではなく、DNAポリメラーゼ後方に結合した(新生2重鎖DNA上の)βクランプとDnaA蛋白質とが相互作用することを示唆する。次に、RIDAに必要な第3の蛋白性因子(IdaB)の同定にかなり迫ってきた。候補遺伝子の産物にマルトース結合性蛋白質タグを付した精製標品を用い、試験管内RIDA再構成に成功した。また、複製周期の同調性維持に関わるActB蛋白質を解析した結果、DnaA蛋白質と直接相互作用しRIDAを阻害することが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Takata,M,Gvo,L.,Katayama,T.,Hase,M.,Seyama.,Y.,Miki,T.,Sekimizu,K.: "Mutant DnaA proteins defective in opening of oriC,the origin of chromosomal DNA replication in Escherichia coli"Mol.Micubiol.. 35・2. 454-462 (2000)
• [文献書誌] Kurokawa,K.,Nishida,S.,Emoto,A.,Sekimizu,K.,Katayama,T.: "Replication cycle-coordinated change of the adenine nucleotide-bound forms of DnaA protein in Escherichia coli"EMBO J.. 18・23. 6642-6652 (1999)
• [文献書誌] Gvo,I.,Katayama,T.,Seyama,Y.,Sekimizu,K.,Miki,M.: "Isolation and characterization of novel cold-sensitive dnaA mutants of Escherichia coli."FEMS Microbiol.Lett.. 176. 357-366 (1999)
• [文献書誌] Katayama,T.,Sekimizu,K.: "Inactivation of Escherichia coli DnaA protein by DNA polymerase III,and negative regulations for initiation of chromosomal replication."Biochimie. 81・8. 835-840 (1999)
• [文献書誌] 片山 勉: "DNAポリメラーゼの新機能:染色体複製開始の負の制御"蛋白質核酸酵素. 44・7. 845-853 (1999)