研究概要 |
複製モニターに関して、本年度は以下のことを明らかにした。 1.複製開始領域には、M期後期からG1期にかけてpre-RC(pre-replication complex)が形成される。その後、Cdc45(=Sld4)が結合することが複製開始には必須である。このCdc45の結合には、新たな因子、Sld3が必要であることを示した。さらに、Cdc45の強固なクロマチン結合には我々の分離したSld5,Psf1,Psf2からなる新規の複合体が必要であることを見出した。 2.Dpb11と複合体を作って複製に働くSld2は、Cdkによるリン酸化部位を6ケ所持ち、Cdkに依存してS期にリン酸化されることを見出した。Sld2のCdkによるリン酸化可能部位に変異を導入すると、Dpb11と複合体を作ることが出来ず、DNA複製に欠損を示す。また、Sld2は不安定で、すぐに分解されてゆく。従って、CdkがSld2のリン酸化を通して複製開始を制御し、且つその後Sld2が分解されることにより重複複製を阻止していることが示唆される。 3.RFCはRfc1〜5のサブユニットから成っているが、Rfc2〜5はRad24又はChl12とも複合体を作り、モニター系にはこれら3つの複合体が重複して関わっていることを明らかにした。 4.染色体DNAに2本鎖切断が起ると、チェックポイントが働く。この時、2本鎖切断部位周辺にMec1、Rad17-Mec3-Ddc1がそれぞれ独立に結合することを示した。Mec1は哺乳動物のATMホモログと考えられており、モニター系において中心的役割をするプロテインキナーゼである。また、Rad17-Mec3-Ddc1はPCNA(ホモ3量体)とアミノ酸配列に相同性がある。複製反応では、PCNAはRFCによって鋳型にローディングさせられる。2本鎖切断部位周辺でも、Rad17-Mec3-Ddc1の結合はRad24に依存しており、複製反応でのRFCとPCNAの関係に類似している。
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