研究概要 |
分子量約125MDaの巨大な蛋白質複合体である核膜孔複合体は,脂質よりも蛋白質成分に富む核膜に埋め込まれているため,機能構造体として単離することが困難である。また、遺伝学的アプローチによる解析から、通過反応そのもののメカニズムに迫ることが極めて困難である。assembleした核膜孔複合体上で通過反応中の個々の因子の動態を直接みることができれば,通過反応に関する多大な情報が得られると考えられる。 対物レンズを使って全反射させる照明法を応用して開発されている細胞内で1分子イメージング可能な蛍光顕微鏡法を用いて、1つの核膜孔複合体上で、輸送反応中の個々の輸送因子の動態を可視化する試みをしている。この顕微鏡ではガラス表面に近いほど高感度観察ができるので,観察に用いる細胞として、接着の強いMadin-Darbybovine kidney(MDBK)細胞を選び、実験系としては、輸送因子やenergy sourceを添加することで,核膜孔複合体への結合や通過反応,或いは核内輸送や核外輸送反応を自由に操作できるセミインタク細胞を利用したin vitro輸送再構成系を用いた。本年度はGFP標識した輸送担体importin βとGFP標識したSV40T抗原のNLSをもつ輸送の基質を用いて観察した。核膜孔1個1個に対応すると考えられる点像からなる蛍光像を得た。更に,1つの核膜孔複合体上でGFP標識した輸送担体1分子と輸送基質1分子が観察できた。1分子イメージングと合わせた画像解析により、importin βのassembleした核膜孔への結合定数,1つの核膜孔がimportin βを結合しうる分子数、及び、importin βが1つの核膜孔を通過する速度といった、ごく基本的な、しかしきわめて重要な定量的情報をはじめて得ることができた。
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