レーザー光による全反射照明法を応用した、細胞内で1分子イメージング可能な蛍光顕微鏡法を用いて、GFP標識した輸送担体importinβの核膜孔複合体上での挙動を、セミインタクト細胞を用いたin vitro輸送系で観察した。その結果、核膜孔1個1個に対応すると考えられる点像からなる蛍光像と、核膜孔複合体に結合したGFPimportinβ1分子を捉えることにはじめて成功した。1分子イメージングと合わせた画像解析により、importinβの核膜孔への結合定数、1つの核膜孔複合体がimportinβを結合しうる分子数、及び、各々のimportinβ分子が核膜孔を通過する速度を、核膜孔上の滞在時間の寿命から求めることができた。 1つの核膜孔複合体は最大100〜150分子のimportinβを結合し、各々のimportinβの核膜孔通過速度は、その滞在時間の寿命から、約2秒であることが判明した。これは、1つの核には約3000〜4000個のimportinβが結合する核膜孔複合体が存在するので、1つの核あたり毎分900万〜1800万個のimportinβを通過させうることを証明したことになる。また、importinβと核膜孔の結合定数は、約70nMという、細胞内でおこる分子間相互作用としては、極めて高い結合定数を示すことが判明した。このように、これまでの生化学的、遺伝学的手法では得られなかった定量的情報から、核膜孔複合体が、輸送担体に対して、高いaffinityとcapacityを有することで、効率のよい核膜孔通過反応を担うといった、流通の場として機能する核膜孔複合体の基本的な性質を明らかにすることができた。現在、基質や低分子量G蛋白質Ran存在下でimportinβの挙動を比較しており、通過反応のメカニズムに示唆を与える結果が得られつつある。
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