研究課題/領域番号 |
11242206
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
徳永 万喜洋 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (00192659)
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研究分担者 |
後藤 由起子 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (70252525)
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キーワード | 1分子イメージング / 1分子ナノテクノロジー / 薄層斜光照明法 / 蛍光顕微鏡 / 細胞質核間分子輸送 / 定量的画像解析 / 分子機構定量解析 |
研究概要 |
細胞内で蛍光1分子イメージングを可能にする方法として、新しく開発した薄層斜光照明法をさらに発展させた。照射レーザー光の対物レンズへの入射位置を中心から辺縁へと移動させ、照射角と照射半径を調整することにより、厚さ5μm前後の薄い光の層で試料を照射するものである。低背景で高感度に蛍光試料観察をすることができため、細胞内部でも明瞭な蛍光1分子イメージングを実現した。これまでは、我々の開発した対物レンズ型全反射照明法によって、細胞表面ないし直下のみで1分子イメージングが可能であった。これを、細胞内部でもはじめて可能にしたもので、蛍光1分子イメージングの有用性を大きく広げた。 薄層斜光照明法を用いて、細胞質-核間で輸送される分子をGFPで蛍光標識し細胞内で観察したところ、分子1個の蛍光像が核膜上で観察された。蛍光像が光っている時間から、核膜孔上での通過時間が、約3秒であることがわかった。蛍光ラベルした分子濃度を増やすと、核膜孔の点像からなる蛍光像が得られた。1分子と核膜孔1個との蛍光強度の比から、1つの核膜孔に結合している分子数を定量した。濃度を変えて定量的画像解析を行うことにより、核膜孔との結合分子数・結合定数といった、分子機構上重要な量を定量的に求めることができた。その結果、核膜孔には弱い結合部位と強い結合部位があることが見つかった。弱い結合部位は約100個の分子を集めておくアンテナとして働き、約8個の分子を結合できる強い部位もしくはその近傍で、Gタンパク質との反応がおこって核内に荷物を降ろすのであろうと考えている。 このように1分子イメージング法が、従来求められなかった細胞内での諸量を定量的に求め、分子機構を解明する新しい手法である事を、はじめて示すことができた。
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