研究課題/領域番号 |
11301005
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
田巻 松雄 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (40179883)
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研究分担者 |
野村 浩也 広島修道大学, 人文学部, 助教授 (70269984)
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 助教授 (40302335)
中根 光敏 広島修道大学, 人文学部, 教授 (40212089)
佐藤 繁美 福岡県立大学, 人間学部, 助手 (80254647)
稲月 正 北九州大学, 外国語学部, 助教授 (00232512)
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キーワード | 寄せ場 / 野宿 / ホームレス / 日雇労働 / アンダー・クラス / スキッド・ロウ |
研究概要 |
本年度は、本調査の2年目に当たり、今日の寄せ場像の再構成を、寄せ場相互の比較、寄せ場と周辺下層市場との比較、寄せ場の国際比較、の3点から検討した。 今日の寄せ場像最大の特徴は、日雇い労働市場としての寄せ場の縮小であり、これはどこの寄せ場にも共通する。高齢者を中心に、現金日雇層が生活保護層と野宿層に変容してきたという事実がある。労働市場の縮小が顕著なのは山谷、寿であり、ドヤ宿泊者に生活保護層が占める割合も高い。釜ケ崎は労働市場としての役割は未だ小さくはない。ただし、東京や大阪での調査を通じて飯場ネットワークの拡大が確認されており、日雇い労働市場は寄せ場型から飯場型へと変容しているとの仮説が構成されていて、この面についてはより詳細な検討が必要である。政府および自治体レベルでホームレス問題への対応が進められているが、社会福祉的観点からの政策が主で、就労問題への取り組みは大きく遅れている。ホームレス問題の背景に日雇い労働者の失業問題が深く関係していることは認識されながらも、労働対策は極めて不透明である。寄せ場並びに野宿の問題にかかわる民間団体の運動やボランティアの活動は非常に多様化している。行政への要求とともに、失業・雇用対策を展開する団体や孤立しがちな野宿層の人間関係の回復を目指すデイケアー的な活動をしている団体も増えている。これらの領域でも官民連携のあり方が問われる時代になっている。寄せ場の国際比較では、日雇い労働市場とホームレス問題の関係が1つの焦点である。日本は両者の関係が非常に強いという特徴がある。また、アメリカでは、Criminalization of homelessが進行し、ホームレスに対する空間的な管理と社会的排除が強められている。日本では、ホームレスに対する空間的管理の問題はまだあまり研究されておらず、この点の追究も重要な課題として浮かび上がってきている。
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