研究課題/領域番号 |
11304010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 智 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80182624)
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研究分担者 |
野口 卓 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90237826)
関本 裕太郎 国立天文台, 電波天文学研究系, 助教授 (70262152)
岡 朋治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10291056)
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キーワード | サブミリ波 / 中性炭素原子 / 星間分子雲 / 銀河系 / 電波望遠鏡 |
研究概要 |
本研究では高感度サブミリ波受信機を開発して富士山頂サブミリ波望遠鏡に搭載し、中性炭素原子のサブミリ波スペクトル輝線の広域観測を展開することを目的としている。その分布を一酸化炭素分子の分布などと比較することにより、星形成の母体である星間分子雲が形成される過程を解明する。 本年度は昨年度、一昨年度に引き続き、492GHz輝線および809GHz輝線による観測を展開した。492GHz帯での受信器雑音温度は120K(DSB)と一段と性能が向上した。その結果、おうし座暗黒星雲のL1495領域、へびつかい座分子雲のL1689領域、W3、W4、W5領域、ばら星雲などを初め約10平方度に達する領域について492GHz輝線でサーベイを行なうことができた。また、銀河面分子雲のカタログに基いて、それらに対する492GHz輝線の観測も併せて行なった。 その結果、おうし座暗黒星雲のL1495領域近傍で、^<13>COやC^<18>0のスペクトル線が弱いにもかかわらず、中性炭素原子のスペクトル線が強く観測される領域を新たに見出した。これは、以前、我々がおうし座暗黒星雲の別な領域(HCL2領域)で見出していた「CI rich cloud」と同様の性質を持つ領域である可能性が高い。これらは分子雲形成領域と考えられ、この領域での分子雲の形成を支配する物理的要因を考える重要な糸口を与えるものと言える。このような分子雲形成領域の発見は、中性炭素原子の粘り強い観測によって導かれたものであり、低雑音受信機の開発がそれを支えていることを強調したい。 さらに、ばら星雲、W3、W4、W5領域など、HII領域と相互作用する分子雲について系統的な観測を行なうことができた。これらは、そのような領域における分子雲の形成進化を考える上で重要な意義がある結果である。 このように計画3年度で当初目的をほぼ達成した。今後は観測領域を一段と広げながら、分子雲形成過程の多様性と普遍性の理解を進めたい。
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