原子核乾板によるニュートリノ振動の研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11304016
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 丹羽 公雄 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60113445)
• 研究分担者: 青木 茂樹 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (80211689) ; 中村 光廣 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90183889)
• キーワード: タウニュートリノ / 原子核乾板 / 素粒子標準模型 / クォーク・レプトン / ニュートリノ振動

研究概要

ニュートリノの質量は今日の素粒子研究の最重要研究課題の1つである。本研究はミューニュートリノからタウニュートリノへの振動を探索してタウニュートリノの質量を求めることを目的にしている。3種類知られるニュートリノが互いに混合していれば、ニュートリノの質量をニュートリノ振動の原理を使って求めることができる。混合角は未知の量である。
この研究CHORUS実験(CERNの加速器を使ったヨーロッパの大学との共同研究)は極めて小さな混合角θ_<μτ>【greater than or equal】0.0002まで、質量差(Δm^2=m_μ^2-m_τ^2、Δm^2【greater than or equal】100eV^2)の領域を探索する狙いであった。 原子核乾板はタウニュートリノが衝突して作るτ粒子を直接捕らえる(appearance法)ことができ、たとえ混合角が小さくて、出現するタウニュートリノの反応が数例であってもν_μからν_τへのニュートリノ振動を検出することができる。CHORUS実験は1990年に特別推進費の補助を受けて始まり、実験と解析は順調に進み、探索した領域(Δm^2【greater than or equal】100eV^2)に、θ_<μτ>【greater than or equal】0.0006の範囲で答えは無かった。他方スーパーカミカンデ実験は極めて小さな質量 Δm^2【less than or equal】0.01eV^2の領域に答えの存在を示唆するデーターを得ているが、この結果は我々のCHORUSの結果と矛盾はしていない。CHORUS実験はニュートリノ振動の証拠をつかむことが出来なかったが、将来計画(OPERA)が目指す小さな質量Δm^2【less than or equal】0.01eV^2の領域でν_μ→ν_τ振動を探査する実験が原子核乾板技術で可能であることを示した。

研究成果

• [文献書誌] 丹羽公雄: "タウニュートリノの直接検出"パリティ. 12月号. 16-18 (2000)
• [文献書誌] S.Eskut : "New results from a search for nu/mu→nu/tau and nu/e→nu/tau oscillation."Phys.Lett.B. 497. 8-22 (2001)
• [文献書誌] S.Aoki: "Nuclear emulsions in a large, hybrid experiment (CHORUS) to search for υ_μ→υ_τ oscillations"Nuclear Ins.Meth.. A447. 361-376 (2000)
• [文献書誌] M,Doucet: "Status of the CHORUS experiment."Phys.Atom.Nucl.. 63. 1119-1121 (2000)
• [文献書誌] P,Gorbounov: "A search for nu/mu→nu/tau oscillations by CHORUS at CERN"Nucle.Phys.. A663. 807-810 (2000)
• [文献書誌] S.Aoki: "Direct observation of tau neutrino"Phys.Letter.B. (in press).
• [文献書誌] S,Eskut: "Observation of weak neutral current neutrino production of J/Ψ"Phys.Letter B. (in press).