研究概要 |
本研究の目的は、半導体表面の水素の挙動を多重内部反射型赤外吸収分光法を主たる解析手段として系統的に明らかにすることである。 本年度の研究実績は以下の通りである。 (1)反応実験装置の製作整備 この装置は超高真空槽、真空排気系、超高真空対応試料マニピュレータ、原料ガス供給系、赤外測定計、残留ガス分析計、電子線解析(LEED)・オージェ電子分光装置からなるLEED・オージェ電子分光測定系の調整,超高真空槽内での試料の運搬のためのマニピュレータ、試料ホルダーの調整など,当初予定していた作業を全て終了した。また、真空度は分子の吸着・脱離実験を行うために必要な10^<-10>Torr台の超高真空まで到達させることができた。 (2)Si,GaAs表面上水素含有分子吸着実験 実験装置、赤外反射分光計をはじめとする測定系の整備および調整をほぼ終了したので、水素含有ガス分子の半導体表面吸着・脱離過程の実験を行った。主たる研究成果は以下の通りである。 (1)シラン系分子のSi(100)面吸着:シラン,ジシラン,メチルシランをSi(100)表面上に吸着させ,解離吸着過程を分析した。これらの分子はおもに分子内のSi-H結合を切断してSi(100)表面の未結合種に吸着することを明らかにした。また,吸着種の同定を正確に行うために,Si-H伸縮振動数について第一原理計算の結果と実験値との比較も行った。 (2)水分子および酸素原子によるSi(100)面酸化過程:水分子をSi(100)表面上に室温で吸着させ,その後に表面を加熱することによって起こる表面酸化の微視的過程を調べた。水分子の室温吸着では表面Si-Si結合の切断は起きないが,加熱によってSi-Si結合が切断されその間に酸素原子が入り込むことが分かった。表面を水素で終端したSi(100)表面に原子状酸素を室温で吸着させた場合には,Si-Si結合の切断が起きにくいことが分かった。Si-Si結合の切断には熱エネルギーが必要であると考えられる。 (3)アンモニア分子のGaAs(100)面吸着:GaAs表面の窒化過程を調べる目的で,アンモニア分子のGaAs(100)表面吸着過程を明らかにした。アンモニア分子は低温では分子状に吸着するが,表面温度が500度以上になると解離することが分かった。
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