研究概要 |
○Al_<73>Ni_<22>Fe_5デカゴナル準結晶 昨年度まで,従来10回対称クラスターをもつと信じられてきたAl_<72>Ni_<20>Co_8デカゴナル準結晶に対してHAADF法を適用し,この原子クラスターが鏡映対称しかもたないことを初めて見出した.今年度,Al_<72>Ni_<20>Co_8と同じ構造をもつ第二例目のデカゴナル準結晶をAl_<73>Ni_<22>Fe_5合金において見出した.Al_<73>Ni_<22>Fe_5においては,Al_<72>Ni_<20>Co_8で見られなかった5回対称クラスターも少数であるがみられた.このことは五回対称クラスターと鏡映対称クラスターの構造が類似していることを示唆している.またAl_<73>Ni_<22>Fe_5の価電子濃度はAl_<72>Ni_<20>Co_8のそれと非常に近く,これらの準結晶が電子化合物として安定化していると考えられることが判った. ○Al-Co系巨大単位胞近似結晶 Al_<73>Co_<27>合金において,格子定数のきわめて大きな単斜晶近似結晶相(a=5nm,b=0.8nm,c=3nm,β=93deg.)をHAADF法により初めて見出した.これまで報告されている近似結晶の中でも最も格子定数の大きいものの一つであり,原子クラスターおよびその局所配列が準結晶のそれと非常に近いと考えられる.この近似結晶は直径2nmの5回対称クラスターおよび擬5回対称クラスターからなる.クラスター間距離は1.2nmおよび2.0nmで,それらは準結晶中のものと同じである.この構造は最も近似度の低いAl_<13>Fe_4近似結晶の基本クラスターである一辺約0.47nmの五角形クラスターで分解できることが判明した.このことは今回見出したAl-Co近似結晶がAl_<13>Fe_4近似結晶の構造を拡張したものとして理解できることを示唆する.
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