研究概要 |
雲形成過程の解明:雲内の雲粒粒径分布に対する支配パラメータとして様々なものが存在するが,特に重要なものとしてエアロゾル数濃度,エアロゾル組成,上昇流速度等を挙げることができる.今年度は,異なる組成のエアロゾルを人工的に導入した場合の観測結果から,エアロゾル組成の違いによる具体的成果について考察できた. 実験において,塩化ナトリウム及び硫酸アンモニウム等のエアロゾル粒子の撒布を実施した.この時,粒径0.01μm以上のエアロゾル数濃度については,塩化ナトリウム撒布事例では約4300個/cm^3,硫酸アンモニウム撒布事例では約3900個/cm^3というかなり近い条件となっていた.その他の環境条件もほぼ同じであった為,組成毎の効果の違いを両者によって比較できる.実際に生成された雲粒数は,塩化ナトリウムの時の約840個/cm^3に対して硫酸アンモニウムの時は約530個/cm^3で,エアロゾル組成の違いの効果が検出できた.他方,雲粒粒径に関しては,測定による有意な差は見られなかった. 酸性雨の解明:酸性雨の形成機構の解明のワンステップとして,SO_2の大気中での反応機構と反応速度を調べた.前年度までの実験で,坑底よりSO_2ガスを放出したときにSO_2ガスの雲粒への取り込みが認められた.そこでSO_2ガスが雲粒内に取り込まれた後の過程を調べるため,NaHSO_3ミストを噴霧して,雲粒内での亜硫酸の酸化速度を求めた. NaHSO_3噴霧時に坑底でのSの到達率がNaに比べて低く,このことは雲粒内のS(IV)のSO_2ガス化によって説明された.雲粒内のS(IV)のガス化は,バルク溶液と雲粒の違いを表す結果であり,バルク溶液の反応をそのまま雲粒内反応に適用できないことがわかった.また S(IV)の酸化速度は6.0×10^<-2>〜7.0×10^<-2>%/Sで,その酸化速度はpHに依存することが求められた.
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