研究概要 |
本研究の中心となるのは,熱帯太平洋の135゜Wから170゜Eまでの6カ所に設置したセディメントトラップ試料と,熱帯太平洋全域から採取した各層採水のフィルター試料である。前者については,1999年12月に東端を除く5カ所からのトラップ試料が回収され,現在検鏡試料を作成中である。後者のうち,西太平洋からの各層採水試料について走査型電子顕微鏡を用いた群集解析を進めた結果,水塊のダイナミクスと石灰質ナノプランクトン群集が密接な相関を持つことを明らかにし,国際誌Marine Micropaleontologyで現在印刷中である。また,西太平洋暖水塊の出口に当たる南東インド洋の各層採水試料についても,石灰質ナノプランクトンの群集組成から水塊の特性を定量的に示す式を編み出した結果をやはりMarine Micropaleontology誌で印刷中である。 今年度は更に,北西太平洋の3カ所に設置されたトラップ試料を用いて,暖水塊から間接的影響を受ける中緯度域でのココリスフラックスを研究した。トラップは, 40゜N 165゜W,44゜N 155゜W,50゜N 165゜Wの水深約3000mに1997年11月から1998年7月まで設置された。解析の結果,黒潮続流の影響下にある40゜Nと44゜Nではフラックスが高く,採取期間を通しての平均は前者で6.1x10^9/m^2/day,後者で4.0x10^9/m^2/dayであった。一方亜寒帯の50゜Nステーションでは2.1x10^9/m^2/dayであった。ココリス群集の季節変化は各ステーションで異なっており,水塊の違いを反映していると思われる。
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