研究概要 |
熱帯太平洋170°E地点でのトラップ試料については,最初の1年目試料の観察結果は,ココリスフラックスの年間平均値は,1,000mレベルで3.2x10^8/m^2/day,3,000mレベルでは7.0x10^8/m^2/dayであった。本来,1,000mの方が3,000mより大きくなるはずであるが,ここでは半分になっている。このような逆転関係は西太平洋の複数の観測点で実測されていたが,今回はこの0°170°E地点と44°N155°E地点でも観察され,陸地や島の近辺では広範囲に渡って,中・深層中を極微小粒子が大量に水平運搬されている事実が明らかになった。 更に,北西太平洋3カ所のトラップについても,昨年度の継続となる半年分の試料を分析した。ココリスフラックスの年間平均は,40°Nで4.3x10^9/m^2/day,44°Nで5.9x10^9/m^2/dayであった。一方50°Nでは,昨年度の分析値は低かったが夏期に大きなフラックスがあり,年間平均は5.0x10^9/m^2/dayとなって他の2ステーションと同等の値となった。ただし,40°Nと45°Nでは炭素とココリスのフラックスが同調するのに対し,50°Nでは春の炭素フラックス極大に対応するココリスフラックス増加が認められない。これは,春のブルームは珪藻主体,夏のブルームは石灰質ナノプランクトン主体という,プランクトン群集の観察結果を裏付けるデータである。 西太平洋の水塊ダイナミクスと石灰質ナノプランクトン群集の相関を明らかにした結果は,Marine Micropaleontology39巻に発表した。また,西太平洋暖水塊の出口に当たる南東インド洋で,石灰質ナノプランクトンの群集組成から水塊の特性を定量的に示す式を編み出した結果と,過去3万年間の古環境を復元した結果も,同誌の39巻と40巻に発表した。
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