研究概要 |
今年度は,熱帯太平洋170°E地点(Station 9)と170°W地点(Station 12)からのセディメント・トラップ試料の,それぞれ1年分(1999年12月〜2001年1月)についてココリスの群集とフラックスの季節変化を研究した。170°E地点では,連続した2年間の測定となる。昨年報告したように,最初の1年目(1999年)における,ココリスフラックスの年間平均値は,1,000mレベルで3.2x10^8/m^2/dayであった。しかし,2年目(2000年)は最大でも1.7x10^8/m^2/day(5月上旬)しかなく,春の極大は極端に小さなものとなっている。一方,170°E地点の3,000mレベルでは,年間ごとのフラックス平均値には大きな違いが認められなかった。しかし,1999年と2000年では季節変動に大きな差がある。1999年には春(3-6月)と秋(9-10月)の極大があり,秋には春の2倍以上のフラックスを記録した。しかるに,2000年では最大フラックスは冬(1-2月)に発生しており,春の極大は前年度と同程度であったものの,秋の極大は前年度と比べてかなり小規模なものとなっている。これは,2000年後半にはラニーニャが弱まったことによると思われる。 東西2つの観測点を比べると,2000年前半では170°Eでのフラックスの方が170°Wよりも高かったが,同年後半では次第にこの関係が逆転し,ラニーニャの収束に伴って混合帯が東方へ移動した事実の反映と思われる。また,170°Eにおける2年間の観察で,熱帯太平洋でも下部有光層に特有のタクサには季節性のあることが分かった。2002年1月に,これら両地点において2001年の大部分をカバーする新たなトラップ試料が回収されたので,ラニーニャからエルニーニョへの変化に伴うココリスフラックスの変動が明らかになると期待される。
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