研究概要 |
研究遂行上重要なX線CT装置についての基礎的な実験をおこない、さらに隕石のCT撮影とその解析を一部おこなった。 X線CT法は、物質の線吸収係数(LAC)の2次元分布を断面像(CT像)として非破壊で求める方法である。CT像で推定されたLACの値はCT値と呼ばれ、白色X線を用いた場合には、両者には一様な関係にない。医療用CT装置についてのCT値とLAC値との関係(前年度の結果)を、論文として発表した(Tsuchiyama et al.,2000)。また、本研究費で新たに購入した高分解能X線CT装置についても、同様の研究をおこなった。試料を円筒形の物質で囲むこと、標準物質でCT値LAC値を規格化することにより、両者の間に定量的な関係があることがわかった(Tsuchiyama et al.,投稿中)。これにより、未知の物質についても、CT値からLACを推定することにより、その物質を推定できる。また、大型放射光施設であるSpring-8のBL20B2に設置されたX線CT装置についても同様のことをおこない、単色光を用いたこの装置では、広い条件下でCT値=0.9xLAC値の関係があることを明らかにした(土山ら,2000)。 一方、炭素質コンドライト隕石であるY77003(CO3.5)について、CT撮影を備品で購入した装置を用いておこない、その3次元構造を明らかにした。これにより、「金属鉄-硫化鉄がかつてはコンドリュール形成時に珪酸塩コンドリュールと同様に、溶融した液滴(金属鉄-硫化鉄)として形成され、集積後周囲の珪酸塩のよって変形を受けた」という仮説を支持すると思われる構造を、いくつか見いだした。これらの構造をさらに詳しく調べるため、CT画像をもとに試料を小さく切り出し、SPring-8での撮影もおこなった。これについての詳しい解析を今後すすめる予定である。
|