研究概要 |
本年度は本研究費により固体高分解能MAS NMR装置(Varian Unity Inova 400)を購入・設置した.調整のトラブルなどが導入初期にあったが,現在稼動している.最初にテストとしてパイロフィライトやアルミナで^1H,^<29>Si,^<27>Alについて測定を行ったが,所定の性能を十分発揮していることを確認した.現在Alを含むケイ酸塩ペロブスカイト合成の準備を開始したところで,試料が出来次第^<29>Siと^<27>Al MAS NMR測定を行う. 一方これと並行して,非経験的分子軌道法を使ってアルミノシリケート中の^<17>O,^<27>Al,29SiのNMR物性の予測を行った.これは得られたNMRスペクトルから局所構造を推定するために必要な計算であり,特に測定データの少ない^<17>Oスペクトルの解釈には必要不可欠である.アルミノシリケート中にはAl-O-Si,Si-O-Si,Al-O-Alおよび3配位酸素(トライクラスター)の酸素種が存在する可能性がある.後者2つはその存在がこれまで認められていなかったが,最近それらを検出したとする報告がある.これらの同定は必ずしも十分な裏付けがないため,我々はそれらの酸素種がどのようなNMR物性を持つか計算を行った.その結果トライクラスターについては他の酸素種と区別が困難であること,およびAl-O-Alについては十分区別が可能であることを示した.この結果は既に発表・印刷された.この計算自体は主に4配位のSi,Alについて行われたが,次年度はこれを6配位Si,Alに拡張して高圧相のNMR測定結果の解釈に役立てるつもりである.
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