研究概要 |
本年度は残念ながらNMRプローブが故障のため7ヶ月間もメーカーに修理のために戻ってしまい,実験の方は十分に行えなかった.その分計算によるNMR物性の予測により重点を置き,研究を行った. 実験の方では代替のプローブを使って,高圧含水CaMgSi2O6ガラスの局所構造を1H,29Si NMRと1H-29Siの交差分極法で調べた.その結果H2Oの溶解に関していくつか興味深い結果を得た.またCa2Al2O5欠陥ペロブスカイトを高圧合成し,現在測定を行っているところである. 計算の方では非経験的分子軌道法による含水ケイ酸塩のNMR物性の予測を行った.これは実測のNMRスペクトルから局所構造を推定するために必要であって,ガラス中の水の存在形態や水素結合の情報を知るために重要である.計算の結果は,これまでNaAlSi3O8などでH2Oと解釈されてきたピークが,OHであることを示唆する.またSiOHが固定されたものではなく,回転などの運動をしていることが予想された. また第1原理計算法による結晶の電場勾配の計算も行った.これは例えばAlや酸素のような核四極子モーメントを持つ核のスペクトルの解釈には必要不可欠な情報である.Ca2Al2O5を含むさまざまな結晶について第1原理計算を行った.既に実測データがあるものと比較すると,計算による結果は実測データをよく再現する.このため第1原理計算による予測が十分実用的であり,核四極子モーメントを持つ核のNMRスペクトルの解釈を飛躍的に容易にすることが期待される.Ca2Al2O5のAlについてはかなり大きなCqが得られ,我々の現在の装置では測定に困難が予想される. 次年度は遅れている実験の方に重点を置き,ケイ酸塩ペロブスカイトについての合成・測定を行う.
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