研究概要 |
本年度は高圧試料のプロトンNMRによる研究の予備実験として,含水ガラスにおけるプロトンNMRの研究を主に行った.含水ガラスを合成し,そのプロトンMAS NMR, CP-MAS NMR,またSi MAS NMR測定を行い、プロトンの環境や水の溶解機構について調べた.含水ガラス試料は主に内熱式ガス圧装置で合成した.しかし,含水条件で急冷できないメルトが多く,きれいな含水ガラスが得られたのは、現在のところNa2 Si2O5, Na2Si4O9, Na2CaSi4O10のみである. プロトンの測定は高感度であるが故,不純物やプローブ自体のバックグラウンドなどの効果を受けやすい.このため試料のハンドリング(手袋の使用)や測定方法などを工夫した.その結果既にNMR研究報告のあるガラスについては,それを再現するデータが得られるようになった.使用しているプローブはプロトンバックグラウンドが大きいが,ブランク試料のデータを差し引くことにより十分発表に耐えるデータが取れるようになった.現在注文中のプローブは低プロトンバックグラウンドであるので,高圧鉱物のような少量の試料からのプロトンNMRが可能になろう. NMRによる含水ガラスの構造はまだ組成依存性を見る実験がガラス作成困難により十分ではないが,水の溶解機構が単にH2Oとして入るかSi-O-Siを切ってSi-OHとして存在するだけではなく,逆にネットワーク装飾イオン側につくことが我々の結果から見えつつある.これは従来の常識とは逆に水がネットワークを重合させるため,これは水の溶解機構について非常に重要な発見である. 前年度のプローブ故障等による研究のスケジュールが全体的に遅れてしまったが、今後含水ケイ酸塩ペロブスカイトを初めとする高圧鉱物についての合成・測定を行う.また2台目のプローブが近い内に入り、これはもっと早い回転が可能なためA1を含むペロブスカイトのNMRに威力を発揮すると予想される.
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