1.蛇紋岩ダイアピルの成因モデル 伊豆・マリアナ前弧海盆に産する蛇紋岩海山を蛇紋岩ダイアピルとしてモデル化し、その形成の時間スケールと空間スケールを議論した。くさび型マントルの最下膚が沈み込むスラブからの水の供給によって蛇紋岩化し、レイリーテイラー不安定性によってダイアピルを形成したと解釈した。蛇紋岩海山の分布からダイアピル間のスペーシング(波長)を読み取り、マントルと蛇紋岩の粘性比とスペーシングの関係からくさび型マントルの最下層に発達する蛇紋岩層の厚さを10mのオーダーであると推定した。またこの厚さの蛇紋岩層の形成に要する時間を議論し、現在の沈み込み帯に発達する蛇紋岩ダイアピルの形成の時間スケールを説明するには拡散モデルで十分であることが示された。 2.花こう岩系の融解実験とメルト中の拡散係数の決定 共融点よりも高温の条件で非平衡融解実験を行い、融解対の間に形成されるメルト層の形成のメカニズムを明らかにし、その厚さからメルト中の拡散係数の大きさを見積もった。実験は100ないし200MPa、750-900度の条件下で、アルバイトまたはカリ長石単結晶の周囲に石英または(石英+アルバイト)の粉末と水を配置した。いずれの場合も単結晶と粉末の間に厚さ数10〜数100ミクロンメーターのメルト層が形成された。メルト層中には明瞭な組成勾配が観察され、実験時間とメルト層の厚さの関係から双曲型成長則が成立しており、メルト層が拡散律速によって形成されていることが明らかになった。
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