研究課題/領域番号 |
11304041
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
松本 吉泰 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (70181790)
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研究分担者 |
渡邊 一也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助手 (30300718)
高木 紀明 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教授 (50252416)
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キーワード | グラファイト / Pt(111) / Ag(110) / 一次元化合物 / 多光子光電子分光 / 紫外光電子分光 / 光化学 / 表面状態 |
研究概要 |
本年度は金属表面上のナノ構造物質として、Pt(111)表面上のナノグラファイトの電子状態と反応、及び、Ag(110)表面上のAgO擬一次元鎖の光反応とメチル基の反応制御について研究を行った。 (1)Pt(111)表面上のナノグラファイトの電子状態と反応: Pt(111)表面上でエチレンを熱分解することにより単一層のナノグラファイトを生成することができる。このナノ構造物質の電子状態を通常の紫外光電子分光、及び、多光子光電子分光により研究を行った。その結果、多光子光電子分光によりグラファイト平面内での炭素P軌道に由来するσ^*非占有状態を同定することができた。これは従来からグラファイト固有のインターレイヤーバンドの表面固有状態なのか鏡像準位なのかという帰属のあいまいさが残っていたが、本研究によりこれは前者であることを初めて明らかにすることができた。この結果と紫外光電子分光によるπ占有状態との結果をバルクグラファイトのそれと比較することにより、ナノグラファイトはPt(111)表面と非常に弱く相互作用していることがわかった。さらに興味深いことは、このナノグラファイトに水素原子を照射したところ、σ^*もπ電子状態もきわめて大きな影響を受けることを見出した。この原因はまだ明らかではないが、ナノグラファイトのエッジにある炭素の水素修飾がグラファイト内の電子状態に大きな影響を与えている可能性が高い。 (2)Ag(110)表面上のAgO擬一次元鎖の光反応とメチル基の反応制御: Ag(110)表面を酸化した時に生成される特徴的なAgO擬一次元鎖に紫外光を照射すると酸素原子が表面から消失することが知られていたが、その励起及び反応メカニズムはまったく不明であった。そこで、本研究ではX線光電子分光、オージェ光電子分光などを用いて系統的に研究を行った。その結果、この酸素消失反応が起きるのは表面上にカーバイド的な炭素原子が存在することが不可欠であることを証明した。また、反応は表面近傍の光吸収によって開始され、AgO鎖の電子励起、活性化されたAgOセグメントと表面炭素の反応、反応性生物であるCOの更なる酸化によるC0_2生成とその脱離によって振興することを明らかにした。
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