研究概要 |
高周期14族元素(Si,Ge,Sn,Pb)を含む芳香族化合物に関しては、安定な化合物として合成・単離された例は殆どなく、その基本的な構造・性質は未解明である。本研究では、独自に開発した非常にかさ高く有効な立体保護基である2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル基(以下Tbt基)を用いた速度論的安定化の手法により、含高周期14族元素芳香族化合物を安定に合成しその構造・物性を解明することでこれらの化合物の芳香族性の系統的な評価を行うことを目的とした。 平成11年度までの研究において既に申請者らは、Tbt基をケイ素上に導入することにより2-シラナフタレン1[TbtSiC_9H_7]およびシラベンゼン2[TbtSiC_5H_5]を安定な結晶として合成・単離することに初めて成功し、これらの化合物が高い芳香族性を有することを明らかにした。平成12年度の研究においては、より高周期の14族元素であるゲルマニウムを含む芳香族化合物である2-ゲルマナフタレン3[TbtGeC_9H_7]の合成について検討を行った。前駆体となるブロモゲルマン4[Tbt(Br)GeC_9H_8]と(i-Pr)_2NLiとの反応を行うことにより、目的とする2-ゲルマナフタレン3を初めて安定な結晶として合成・単離することに成功した。3のX線結晶解析、紫外・可視吸収スペクトルおよびラマンスペクトルの測定により、低周期元素類縁体であるナフタレンおよび2-シラナフタレン1と同様に、2-ゲルマナフタレン3も高い芳香族性を有することが判った。また、その反応性についても検討を行い、2-シラナフタレン1や、シラベンゼン2の場合と同様に、2-ゲルマナフタレン3が高い芳香族安定化を受けているにもかかわらず、ゲルマニウム-炭素二重結合が非常に高い反応性を示すことを明らかにした。
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