研究概要 |
金属錯体の色をプローブとして、錯体の構造、生成機構、反応性についての研究を中心目標として計画した。色に関する諸問題を扱うということから、クロモトロビズムを発現する可能性のある錯体開発を幅広く進めていこうということが本年度の大きな目的である。具体的研究計画として、本年度に用いた配位子は、(1)ベンツイミダゾールを含むビリジン系3座配位子、(2)環状トリアミン、(3)4座アミド、(4)N-アルキルエチレンジアミン、(5)ジケトン、(6)テトラケトン、(7)シアノ架橋配位子等である。 すでに幾らか結果の出ているものも含めて、本年度について纏めると以下のようである:配位子(1)の鉄(II)錯体は、興味あるスピンクロスオーバ挙動を示すもので、それらの構造とポリビニールアルコール中での異方的な挙動を電子スペクトル(偏光)を用いて検討した。配位子(2)については、1,4,7-triazacyclononane(tacn)を合成しその上に、3個のカルボキシル基を付けた(triacetate=tacnta,tripropyonate=tacntp)6座配位子を得た。この配位子合成はかなり大変なもので、研究協力的してくれた学生は、ほんのわずか(数百ミリグラム)の錯体を得、構造解析もでき、目的の錯体であることが分かった。その時点で、出発原料であるtacnは、購入することにした。かなり高価で(約100g=70万円)であるが、実験の進展には非常に役立った。電気化学を見ると、非常に興味深い可逆的酸化還元挙動が見られ、面白いエレクトロクロミズムの系が確立された。(3)については、アミド4座配位子が作る銅錯体の単核 複核変化が面白いもので、現在論文として纏めている途中である。(4)については、ジゲトンとの混合配位子系を合成し、そのソルバトクロミズムやサーモクロミズムを検討中である。その他の様々の配位子を用いた新しい錯体系の合成にもチャレンジしているが、それらの結果については次年度に継続する。購入した機器(備品)の主なものは、構造解析用のX-線解析装置、および合成のために必要不可欠であったドラフトチャンバーであった。これらの機器を用いることにより、本研究は格段の進捗状況を見せたわけで、有益なものであった。
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