研究概要 |
(1)混合配位子複核錯体の合成とその溶液内挙動。複核錯体生成の可能性を持つ架橋型テトラアミンとアセチルアセトナートを含む銅2核錯体の合成単離が出来、その構造を決め、アセトン溶液内における擬ハロゲン化物イオン(NCS-およびN3-イオン)との相互作用を調べた。それぞれの平衡定数も明らかとなり、この結果、アジ化物配位子の場合には、スタック型2核錯体が生成するが、チオシアナート配位子の場合にはそれが見られないことがわかった。今後、溶媒系をうまく選択することによりスタック型とオープン型の可逆的系の開発等も可能となるわけで、次年度以降にそれを検討する予定である。 (2)混合キレート生成要因の解明。mer-規制、あるいはfac-規制配位子を用いた際の混合配位子錯体の生成は相手配位子としてどのようなものが適切か、様々の多座配位子を用いた系の混合錯体生成を検討した。たとえば、terpyridine,1,4,7-triazacyclononaneとpyridinediacetate,imonodiacetateでは、その配位子構造に応じて選択的に混合配位子錯体を形成することが明らかとなった。 (3)錯体における単核-複核異性化が観測されたこと。オキサミド4座配位子を含む銅錯体では、配位子の置換基によって、単核をとるもの、複核をとるものがあり、またその平衡混合物を与えるものも可能となる。これらの系を系統的に調べた。また、この単核-複核変化はポリマー異性として分類されるもので、新しい異性現象として興味深い結果である。 (4)環状ジアミンとジケトナート配位子による新しいクロモトロピック錯体の合成と溶液内挙動。N-alkylated1,4-diazacycloheptane(環状ジアミン)と種々のb-diketonateを組み合わせたニッケル混合錯体を合成し、そのソルバトクロミズム、サーモクロミズムを調べ、溶液内平衡定数を求め、対応する鎖状ジアミンとの違いを調べた。一般に、環状の系は、立体的に配位平面の上下をシールドする傾向が強く、平面性の高い錯体を形成することが明らかとなった。
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