研究概要 |
外部環境の種々の刺戟(化学的および物理的環境条件変化)によって、可逆的な色変化を示すものを総称してクロモトロピズムと呼ぶ。多彩な色を持つ金属錯体は、とりわけこのクロモトロピズムの研究対象として興味深いものである。本年度の研究では、主に混合配位子錯体のクロモトロピズムについて総合的に研究した。それらの成果はおおむね以下のようである。(1)混合配位子錯体の合成と性質について(Inorg.Chim.Acta, 321, 56-62(2001))検討した:phen(1, 10-phenanthroline)あるいはdmphen(2, 9-di-methylphenanthroline)とacac(acetylacetonate)を含む銅錯体の合成とそれらの構造である([Cu(acac)(L)(NO_3)]、ここでL=phen or dmphenである)。phenの場合、その錯体の構造は、四角錐でアピカル位に硝酸イオンは単座で配位する。一方、対応するdmphen錯体の場合、アピカル位にはdmphenの窒素原子が配位すると言う事が明らかになった。これは、dmphenのメチル基の立体障害である。(2)次に、さらに大きな立体障害のある配位子,Ar-BIAN(Bis{N-(2, 6-diisopropyl-phenyl)-imino}acenaphthene),を用いた銅(II)混合配位子錯体を合成しその構造を明らかにした(Eup.J.Inorg.Chem., 2001, 2641-2646)。この錯体は、アルケンの高分子化触媒となる可能性を持つ新しい錯体である。(3)溶液内でのクロモトロピズムに関する我々の研究あるいは他の研究者の研究をまとめたものとして次の2件の総説を報告した(Coord.Chem.Rev.218, 113-152(2001), Monatsh.Chem., 132, 1279-1294(2001))。(4)希土類金属イオンは配位数の多い錯体を作るが、それを利用して、高次混合配位子錯体の合成に成功(J.Chem.Soc.Dalton Trans., 2002, 527-533)し、かつそれらの蛍光特性について調べた(Chem.Physics, 269, 323-337(2001)).。
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