研究課題/領域番号 |
11304049
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
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研究分担者 |
吉田 弘幸 京都大学, 化学研究所, 助手 (00283664)
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キーワード | 有機薄膜 / 電子構造 / 価電子状態 / 空状態 / 紫外光電子分光 / 逆光電子分光 / その場観測 / 高分解能化 |
研究概要 |
本研究は、有機半導体を主とした有機薄膜の、電子物性を担う価電子状態と(その直上の)空状態の電子構造を、前者には紫外光電子分光法(UPS)、後者には逆光電子分光法(IPES)という極めて有力な直接観測法を適用して、同一試料のその場観測により精確に把握する手法を確立することを目的としている。代表者らが各状態を別々の装置で測定している研究でも例が限られその意義は大きいが、両手法を統合して広域電子構造を一挙に捉えられれば、有機薄膜の電子物性研究に著しく貢献しうる。同時に、現有装置と比べてIPESのエネルギー分解能に格段の向上が望まれ、これに対処できれば、エネルギーギャップの上下の電子構造が同等の精度で論じられるようになる。そのため、本研究では併せてこれを目指している。 今年度は、IPESの測定限界を決める励起電子電流量など、高分解能化にとって重要な要因を押えるため、現有装置を用いて金属フタロシアニン薄膜などのIPES測定を入念に行った。新システムのIPESの電子源については、エネルギー・空間両分解能とビーム強度との両立の限界に挑んで考案・設計した、低仕事関数のカソードが放出する電子を集束させ後段に設けた静電型エネルギーフィルターに通して両分解能をより高める系を製作し、その性能が概ね予想通りであることを確認しつつある。一方、分光素子を含む真空紫外光検出系について、前年度に基本構想を固め必須部品などの調達を行ったのち、それを活かしたかたちでより高機能化が望める外的状況が生じたため、この状況への対応を図った。それに連動して、ポリクロメーター方式の信号計測系の構成についても方式を決め、その組立てを進めている。また、既存の測定部品を取り付けて試料薄膜中の分子集合形態が評価・制御できる試料調製系についても、試料搬送・操作の的確性を重視した設計を経て製作・構築中である。
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