研究概要 |
過去2年間に導入した磁気特性測定システムを活用して、昨年度に引き続きフェリ磁性体を念頭に置いたビラジカルの磁性を調べている。昨年度興味ある磁性を示したトリメチレンピスニトロニルニトロキシドおよび2,6-ピリヂンビスニトロニルニトロキシドの純度の高い結晶を得ることができ、その磁性を測定し、結果を解析している。一方で、適当なモデルの分子内、分子間磁気相互作用をパラメーターとした磁化率の温度変化解析用プログラムを開発している。上記2種のラジカルに適用したところ、大まかな解析はできているが、なおこれらの単純なモデルだけでは解決できない問題があるようで、さらに精度をあげた解析が必要であることが分かった。なお、今年度は新しい試みとして、磁性、非磁性金属イオンに後者の化合物を配位させた物質についても磁性を調べ比較検討した。 また、転移温度が高い磁性体の開発には電気伝導度の導入が欠かせないことを考慮して、伝導度測定にも応用できるように、この測定システムに手を加えている。現在、金属一絶縁体転移を示す物質や磁気抵抗の振動現象(シュブニコフード・ハース効果)を示す物質に対して適用し、測定法を検討している。前者では、通常転移と同時に結晶が割れて測定しにくいのであるが、本装置の優れた温度制御機構が効いて良好な結果が得られている。また、後者でもほぼ文献と一致する振動現象が観測されている。 伝導性を付与した磁性体の開発には至っていないが、今後そのような物質を研究する手段はほぼ完成した。
|