研究概要 |
平成12年度は,研究対象となる昆虫グループについて,ミトコンドリア遺伝子・核遺伝子を用いた系統解析をインテンシブに行った.計画当初の材料に加えて,チリオサムシ族とマルハナバチ族の系統解析を行い,大陸間の種分化パターンの比較,移動性の異なる昆虫(飛翔による分散力の違い)の種分化パターンの比較を加えた.具体的な研究項目は以下のとおりである. 1.地表性・捕食性甲虫類の系統地理学・進化生態学的解析 (1)ミトコンドリア遺伝子による日本産ハンミョウ類の系統生物地理学的解析 CO1遺伝子の塩基配列決定を10種52個体について行い,種内の地理的分化を明らかにした. (2)ミトコンドリア遺伝子によるオオオサムシ亜属の系統生物地理学的解析 ND5遺伝子の塩基配列を日本各地のオオオサムシ亜属15種の約350個体について決定し,地理的分化・交雑による浸透現象を推定した.また,ND5と16S遺伝子・CO1遺伝子の塩基配列を比較し,このグループにおけるミトコンドリア遺伝子の進化を比較検討した. (3)核遺伝子によるオサムシ亜族の系統解析 ウイングレス遺伝子とホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ遺伝子の塩基配列を世界のオサムシ亜族約70種について調べ,系統樹を作成した. (4)チリオサムシ族の系統生物地理学的解析 南米南部に分布するチリオサムシ族の6種約60個体についてホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ遺伝子の塩基配列を決定し,種間の系統関係と種内の地理的分化を明らかにした. 2.植食性甲虫の種分化に関する遺伝学的解析 東南アジアのニジュウヤホシテントウ群(8産地)について,ミトコンドリアCO1遺伝子系統樹,核型分析,交雑実験による解析を行い,生殖的にも隔離された2系統群が存在することを明らかにした. 3.送粉昆虫マルハナバチ族の系統解析 北米・南米・ユーラシア各地を含む世界各地のマルハナバチ約70種についてアルギニンキナーゼ遣伝子・ウイングレス遺伝子の塩基配列を決定し,種間・亜属間の系統関係を解析した.
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