植物細胞におけるアクチン系細胞骨格構築の分子機構

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11304057
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 姫路工業大学
• 研究代表者: 新免 輝男 姫路工業大学, 理学部, 教授 (80114510)
• 研究分担者: 横田 悦雄 姫路工業大学, 理学部, 助手 (80212299) ; 園部 誠司 姫路工業大学, 理学部, 助教授 (30197024)
• キーワード: アクチン / ミオシン / 原形質流動 / カルシウム / アクチン束化タンパク質 / ビリン / 花粉管 / 培養細胞

研究概要

植物細胞の細胞質基質にはアクチンフィラメントが細胞内骨格を形成し、細胞内構造の維持や原形質流動の軌道としてはたらいている。我々はアクチンフィラメントの構築機構に関する、細胞、分子、遺伝子レベルにおける解析を行った。
植物細胞内では多くの場合、アクチンフィラメントは束を形成している。我々は植物細胞から初めてアクチン束化タンパク質を単離することに成功していたが、遺伝子を解析することによって、これがビリンであることを明らかにした。また、ビリンの束化活性はカルシウム・カルモジュリンによって阻害されることも明らかにした。この成果は、植物細胞におけるアクチンフィラメントの構築制御機構の解析に貢献するものと思われる。
さらに、我々はトチカガミ根毛細胞を用いて、アクチンフィラメントの構築にタンパク質リン酸化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
また、アクチンフィラメントの機能発現にはそのモータータンパク質であるミオシンが重要な役割を果たしている。我々はタバコ培養細胞を用いて、運動性のある2種類のミオシンを単離することに成功した。一方は170kDa重鎖,他方は175kDa重鎖よりなっていた。ポリクローナル抗体による抗原性は著しく異るが、その運動特性やカルシウムによる阻害は似ていた。さらに、植物体の各器官における発現を調べたところ、栄養器官では両者共に発現し、花粉管では170kDaミオシンのみが発現していることが分かった。また、ミオシンのカルシウム感受性には軽鎖としてのカルモジュリンが関与していることも明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Yokota,E.,Muto,S.and Shimmen,T.: "Inhibitory regulation of higher-plant myosin by Ca^<2+> ions"Plant Physiology. 119. 291-299 (1999)
• [文献書誌] Yokota,E他4名: "Biochemical and immunocytochemical characterization of two types of myosins in cultured tobacco BY-2 cells"Plant Physiology. 121. 525-534 (1999)
• [文献書誌] Yokota,E.and Shimmen,T.: "A 135-kDa actin-bundling protein isolated from ily pollen tubes arranges F-actin into bundles with uniform polarity"Planta. 209. 264-266 (1999)
• [文献書誌] Vidali,L.他4名: "The 135kDa actin-budling protein from Lilium longiflorum pollen tube is the plant homologue of villin"Protoplasma. 209. 283-291 (1999)
• [文献書誌] Igarashi,H.他5名: "Actin filaments purified from tobacco cultured BY-2 cells can be translocated by plant myosin"Plant and Cell Physiology. 40. 1167-1171 (1999)
• [文献書誌] Yokota,E.他3名: "Possible involvement of protein phosphorylation in the cytoplalsmic organization and streaming in root hair"Protoplasma. (印刷中).