1)数ミクロンからサブミクロンオーダの単結晶シリコンカンチレバーで、先端に探針を有するもののさらなる小型化に成功した. シリコンの結晶方位による異方性を用いてカンチレバーと探針を形成しているため、極めて精度の高い作製が可能となった.小さいものでは、長さ2ミクロン、固有振動数40MHz、Q値10000のものを実現した.他に、固有振動数10MHz、Q値18000のものも実現した.上記作製例では、前年度のものと比べてカンチレバーの支持方法を改善し、シリコン111面により定義される明確な支持を用いた.これにより支持部へのロスがへり、結果的に3倍程度のQ値を得ることが可能となった 2)1.1GHzのキャリアを有するヘテロダインレーザドップラー振動計を実現した.その結果、100MHzまでの速度計測が可能となった.10MHz以上の帯域で、ノイズ等価振幅が10pm以下であることを確認した 3)レーザドップラー振動計の出力を移相の後、カンチレバー励振用のピエゾ素子に帰還したところ、自励振動が生じた.周波数のゆらぎは5Hz程度で、理論限界よりも50倍程度大きかった.理論限界での質量分解能は10-21乗に達する.計算上、固有振動数100MHz、Q値10000、振幅10nmのカンチレバーの質量分解能は10-238であり、原子レベルの質量変化が検出可能であることを計算上確認した.今後、低温超高真空化で同様の実験を行い、C60などの比較的質量のある分子をカンチレバーに蒸着して周波数変化の量子化を確認する.
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