研究概要 |
本研究では,波長λ=13nmの軟X線にたいしても60%の反射率が得られる反射増加多層膜を光学超薄膜を用いて形成する技術を基礎として,これを曲面鏡に適用し,直入射結像光学系を開発するために不可欠な高精度結像光学鏡を実用化することを目的とする.具体的には,結像性能を得るために必要なλ/10程度,すなわち1nmのオーダー以下の誤差で軟X線の波面を計測・制御するために,多層膜鏡やビームスプリッダー(BS)などを基礎光学要素とした軟X線干渉計測法を開発する.また,この過程で,nm精度のアライメントシステムを備える干渉計測計本体に加え,実験室で干渉計測を可能とするための,光学系を飛散物で汚染しないYAGレーザー励起プラズマ軟X線光源の開発,軟X線干渉縞を計測処理する2次元検出データー処理系の開発を行い,光源から検出器までの結像光学システムの基本要素を完成させる. 本年度は,前年度に引き続いて軟X線干渉計測装置の製作を進めるとともに,新しい干渉計測方式に関する感度と干渉縞の位相シフトのための機械精度の理論的検証を進めた.装置の製作では,干渉計測用の真空槽をはじめ,槽内の光学定盤と,これを真空槽外の除振台に連結する機構を完成した.連結機構は,溶接ベローズなどの除振要素で真空シールする方式で,床面に設置した真空槽と除振台に設置した光学定盤とを機械的に切り離している.また,干渉光学系用の精密ホルダーの製作を進め,主要な機械部をほぼ完成できた.また,理論的検証では,三角光路干渉系をベースに,軟X線用に適用できる新しい干渉計測方式として,三角交差光路干渉方式を採用することを決定できた.現在,可視光による実験的検証の準備を開始している.
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