研究概要 |
物質内の3次元的な兀素分布を求めるためには、対象物質を研磨あるいはエッチングなどの加工を施しながら内部情報を逐次的に積み重ねて行かなければならなかった。このような破壊的な手法は、岩石のような比較的固い物質に対しては適用が容易であるが、生体のような軟質の物体に対して適用が難しい。これらの問題点を解決する手法として、透過率が高く、試料の非破壊観察が可能な結像型蛍光X線顕微鏡を提案した。 蛍光X線の結像には、色収差のないウオルターミラーを対物素子として用いた。このミラーはX線エネルギー12keVまで結像可能で倍率は10倍である。実験には、高エネルギー加速器研究機構のPFおよびSPring-8の放射光を用いた。バックグラウンドノイズとなる散乱X線を少なくするために、励起X線入射方向と蛍光X線結像光学系は直角に配置した。2次元X線画像検出器には画素毎にエネルギー分析可能なCCDカメラを用いた。標準試料として銅、ニッケル、コバルト、鉄の細線を用い、同時画像計測を行った。SPring-8、39XUの実験では励起X線エネルギー9keV,露光時間8分で細線像を得た。同じ試料のエネルギー分析画像を得るために、CCDカメラの画素ごとのエネルギー分析を行った。ホトンカウンティング条件にするために1回の露光時間を5秒に短縮し、240枚撮影した。波高分析を画素毎に行いエネルギー分解能約350eVの画像が得られれた。この手法を人工ダイヤモンドに適用した結果、鉄、ニッケル、コバルトの元素マッピングが可能になった。 3次元画像再構成は、試料を7.2°毎回転して得られる50枚の蛍光X線顕微鏡画像を基にして行った。人工ダイヤモンド中に含まれる金属触媒の残留成分(鉄、ニッケル、コバルト)の3次元元素マッピングが実現できた。本結像型蛍光X線顕微鏡の分解能は10ミクロン以上で、比較的焦点深度が深い(約0.4mm)ので3次元画像が容易に得られる。
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