研究概要 |
本研究では,余盛り除去による溶接残留応力の非破壊評価法の開発に関して,まず,周囲に拘束のない突合わせ溶接平板を対象として,数値シミュレーションによりその定式化を行った.すなわち,不適切性の強い固有ひずみ推定の逆解析過程において,未知パラメータ数の削減および解空間の限定を目的として,数値シミュレーションにより継手固有の特性について調べた. その結果,周囲に拘束のない突合わせ溶接平板においては,固有ひずみのビード方向成分が残留応力生成の支配因子あり,また,余盛り除去に伴って解放される弾性ひずみも,同様にビード方向成分のみに起因して生成されていることを明らかにした.この特性を利用することにより,実測した解放ひずみから,実用上十分な精度で残留応力が推定できることを明らかにした.そして,余盛り除去に伴う解放ひずみの測定誤差の影響を考慮し,精度の高い解を得るために逆問題の適切化手法の導入を行った.また,解放ひずみの測定位置の最適化を目的として,線形モデルの実験計画法におけるD最適基準を適用する手法を提案し、その有効性を示した. 次に,実溶接材に本提案手法を適用し,実際に残留応力の評価を行い,X線法による実測結果との比較を行うことにより,提案手法の基礎的な妥当性の検証を行った.しかし,残留応力のビード垂直方向成分の推定結果に関しては、若干の推定誤差が生じた.この誤差は,解析において無視してきた,固有ひずみのビード垂直方向成分が,板厚方向に変化していると考えれば,矛盾なく説明できることを解析的に明らかにした.
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