今年度は、ハードウェア設計の指針確立のため、具体的な問題を対象に、hardware-friendlyなアルゴリズムの研究を中心に行った。具体的な問題としては、矯正歯科診療におけるセファロ分析を取り上げた。即ち、専門歯科医の経験をベクトル化して学習記憶させ、熟練した歯科医師の代わりにレントゲン写真の診断をさせることを試みた。先ず、local environmental detector の最適化を検討し、ベクトル化単位ブロック(16×16pels)毎に差分情報のヒストグラムとり、これによってエッジ検出の閾値を決めることが有効であることが分かった。また、テンプレートとしては、様々な患者からとったサンプルをベクトル化してそのまま用いる方法では、ベクトル空間では類似していても実際には異なるパターンを誤認識することが分かった。これに対しては、学習アルゴリズムを適用し、10個程度の typical templates を抽出して用いることにより、認識率の向上が得られた。これら詳細なアルゴリズムのチューニングにより、Sella(脳下垂体)、Orbitale、Nasion にたいし、80-90%で正しい認識結果を出すことができた。特に Orbitale は、専門歯科医にとっても同定が困難な特徴点とされるが、本システムは、極めて優秀な認識成績を上げた。以上は、すべてワークステーション上でのシミュレーションによる最適化であり、一つの特徴点抽出に数10分以上かかっている。実時間応答を実現するため、上記アルゴリズムを効率よく実行するための集積回路を設計試作した。画像ベクトルトル化のための回路を、グレースケール用、二値画像用のものをそれぞれに対して作った。また、本システムに適合するように設計した64次元ベクトル用の連想プロセッサも設計試作した。これは、νMOS回路技術と、アナログEEPROM技術を融合した新たなLSIであり、基本的な動作を確認した。以上のように本年度は、知的画像認識システムの基礎を確立することができた。尚、このハードウェアに特化したアルゴリズムは、ヨーロッパの信号処理国際会議に、Oral Paperとして採択されている。
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