本研究の目的は、20GHz程度の高周波まで使え高度集積化が可能な共振子の開拓を目指して、λ/4音響多層膜を用いた新しい超高周波圧電薄膜共振デバイスの研究を行うことにある。本研究で得られた主な成果、知見を以下に要約する。 1.λ/4多層膜上にλ/2圧電膜を付けたλ/2モード構成について伝搬損失を考慮した理論解析を行い、Q値及び電気機械結合係数Kを音響インピーダンス比及び層数の関数として求めた。その結果、インピーダンス比が2程度の場合、音響多層膜の層数が6〜10程度で十分良好な共振特性が得られる事がわかった。 2.圧電膜としてc軸が膜面に垂直に配向した縦波用ZnO膜を取り上げ、ECR-MBE法によって成長させ、その結晶性をRHEEDやX線回折装置で評価した。その結果、非常に高品質なZnO単結晶膜が得られる事がわかった。 3.電子ビーム蒸着装置及びRFスパッタ装置による音響多層膜及び圧電膜の成長とその評価について研究を行った。1μm以下の薄膜の音響特性を評価する方法として圧電振動子の表面に膜を付け、膜付け前後のオーバートーン共振周波数の変化から評価する方法を開発し、成膜方法や成膜条件による音響特性の違いを明らかにした。 4.圧電膜中にエネルギーを閉じ込めた形で表面に沿って伝搬する弾性波の分散特性を解析し、有限寸法電極にエネルギーが閉じ込められた振動を生じさせる事が可能であることを示した。また、複数のエネルギー閉じ込め型共振器を音響的に結合させたフィルタを提案した。 5.素子製作上は圧電膜も含めて層を2種類だけにする事が望ましいので、ZnOを圧電膜及びλ/4高音響インピーダンス層として、またSiO_2をλ/4低音響インピーダンス層として用いる構成を提案し理論解析を行った。また、実際に5層の多層膜からなる3GHz ZnO圧電薄膜共振子を試作し、このデバイスが1-20GHz帯デバイスとして有望であることを示した。
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