研究概要 |
本年度は,「品質保証制御技術確立のための基本技術の統合評価」をテーマに,平成11年度に検討,提案した制御技術の効果的な組み合わせについて検討を行なった.平成11年度における研究ではそれぞれの制御技術の相互連携性についても十分に考慮していたが,実際のシステム構築に際しては制御手法間のインタフェイスの問題だけでなく,利用可能,あるいは実装可能な制御技術の効果的な利用法についても検討する必要がある. 具体的には,実験システム上に,提案した品質保証制御技術を利用した分散型マルチメディアアプリケーションを実装し,トラヒック測定,実時間性の評価,CPU利用状態観測を通して提案技術の相互接続性,適用可能性,実用性について評価,検討し,提案技術の改良を行なった.実装するアプリケーションとしてはネットワーク,エンドシステム双方に大きな負荷を与えると考えられる動画像通信を用いた.動画像通信アプリケーションでは,送信側エンドシステム(サーバ)における動画像の実時間符号化,ネットワークによる動画像データの高速転送,受信側エンドシステム(クライアント)における動画像データの実時間復号化および表示が必要となる. 実験システムでは,エンドシステムにおいて,日立製作所製リアルタイムOS HiTactixを用いることでCPU資源を,ネットワークにおいては同じく資源割当プロトコルTTCP/ITMを用いることでネットワーク資源を,提案手法にしたがって動画像通信アプリケーションに割り当てた.なお,エンドシステムにおいては動画像データの送受信に関わる個別処理をそれぞれスレッドとして実装し,スレッド単位にCPU資源を割り当てることにより,より効率的な制御を実現している. 実証実験により,マルチメディアシステムを構成するそれぞれのシステムが協調しあい,利用可能な資源を有効活用することによりマルチメディアシステム全体で統一的なQoS保証が実現できることを示した.例えば,それぞれ利用可能なCPU資源量の異なる4台のクライアントに対して均等にサーバCPU資源,ネットワーク資源を割り当てた場合には,CPU資源の乏しいクライアントで実時間動画像復号化が行えずデッドラインミスが発生するが,提案手法を用いて適切に資源割当を行った場合にはデッドラインミスが解消され,全てのクライアントにおいて実時間で動画像が再生可能であることが示された.
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