研究概要 |
本研究は地震時に浅層地下構造が構造物に及ぼす影響を解明することを目的とし,本年度は以下のような研究を行った. 1.構造物と地盤の相互作用 ダムを例に周囲の岩盤との相互作用について検討した.アーチダムと岩盤の間のジョイントが開くと,ダム内の引張り応力が解放され,応力が再配分されることを示した.また,ロックフィルダムの解析から,周囲の岩盤の剛性が小さい程逸散減衰が大きくなることを示した. 2.急傾斜する基盤面を持つ表層地盤の移動伝播特性 綾瀬川断層沿いでの地震波形記録を解析し,浅層地下構造の影響により断層直交方向に震動が卓越することを示した.また,断層の動的な破壊と表層付近のより詳細な地下構造を共に考慮可能な地震動解析手法を開発し,福井平野を例に解析した結果,断層の破壊の先端付近と,基盤と沖積平野の境界部で大きな地震動が生じることを示した. 3.表層地震構造が地表に現れる断層に及ぼす影響 (1)逆断層 アルミ棒及び砂を用いた模型実験を行った.アルミ棒を用いた実験により,基盤面に作用する応力は,断層を境に上盤側で圧縮,下盤側で引張り向きに断層変位とともに変化することを示した.また,地盤を弾塑性体,滑り線をジョイント要素でモデル化した有限要素法により,砂を用いた実験結果を比較的良好に再現できることを示し,さらに仮想地盤に対してこの解析手法を適用した結果,堆積層厚の数%を超える鉛直方向の滑りが震源断層で生じると地表に断層が現れる可能性が高いことを示した. (2)横ずれ断層 砂を用いた模型実験を行い,基盤付近では断層に沿うように発生する滑りが,地表に近づくにつれて基盤断層と高角に交わるよう発達していく過程を明らかにした. 今後,振動実験を行い構造物と地盤の動的相互作用についてさらに詳細に検討していくとともに,今年度個別に進めた研究を統合して浅層地下構造が動的相互作用に及ぼす影響を解明する予定である.
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