研究概要 |
水質や日射量といった環境条件が同一で,水理特性のみが異なる複数の開水路において,付着藻類の生育実験を実施した.その結果,流速の大きな水路では,糸状の体のつくりを有する緑藻・藍藻類が優占的に生育することが分かった.また,糸状態の藻類は,単細胞型や群体型の藻類と比較して,流れによる剥離率が小さく,一次生産量が大きいことが示された.また半球状の突起を有する河床面上で,同様の藻類の生育実験を実施した.実験の結果,半球背後に形成される流れの剥離領域において,付着藻類量が大きくなることが示された.以上の実験結果から,付着藻類の一次生産力は,河床面近傍の乱れが大きな場合ほど大きな値を示すことが明らかになった.藻類の増殖過程をより詳細に検討するため,藻類増殖の数値計算モデルを構築した.本数値計算モデルでは,水理特性の違いによる一次生産力の違いを再現するため,藻類層内部における基質の拡散方程式を藻類増殖式と同時に解析し,拡散能の違いに起因した一次生産力の変化を再現している.本数値計算モデルによって,室内実験で見られた付着藻類の増殖過程が良好に再現された.計算の結果,糸状態の藻類は増殖が進行するに伴って,藻類層内部での代謝量が大きくなり,最終的には,一次生産量と代謝量が釣り合った平衡状態に推移していくことが明らかになった.一方,群体状の藻類では,一次生産量と剥離量がおおむね釣り合った平衡状態へと推移していくことが明らかになった.
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