研究概要 |
本研究では,陸域から流入する栄養塩の挙動を現地観測より解明するとともに,内湾における底質と水質の相互作用を明らかにする.そして,栄養塩の溶出機構を考慮した水質・底質予測モデルを開発し,閉鎖性水域への適用を試みる. (1)底泥からの栄養塩の溶出機構を考慮した閉鎖性海域の水質・底質予測モデルの開発:海水からの粒子態窒素・リンの沈降・堆積,底泥における有機物の分解,底泥からの栄養塩の溶出を考慮した水質・底質予測モデルを開発した.本モデルの主要なパラメータに対する感度分析の結果,窒素,リンともに海水からの有機物の沈降速度および分解速度が高いことがわかった.また,溶存無機態リンの溶出速度に関する大阪湾の実測値と比較することにより,開発した予測モデルの再現性と有効性を検証した. (2)大阪湾における水質の再現計算と長期予測計算:開発した水質・底質予測モデルを用いて大阪湾における水質の再現計算を行った.負荷量の変化に伴い,現地観測より得られた窒素,リン,COD濃度の経年変化の傾向をよく再現していることがわかった.また,1979年から実施されてきたCOD総量規制およびリン削減政策の効果を評価・検討した.その結果,1979年以前の陸域からの負荷量が底泥に堆積し,底泥の回復の遅れが溶出速度の減少の遅れにつながることによって,海域の水質改善が妨げられてきたことが判明した. (3)底泥の覆砂・浚渫による水質・底質改善効果の検討:大阪湾を対象に数値シミュレーションを行い,覆砂や浚渫の底質改良を行った場合の水質・底質の変化について検討した.水質改善効果は浚渫よりも覆砂の方が高く,湾奥部の覆砂のみでも有効な水質改善が期待できることがわかった.
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