研究概要 |
誘電体により三次元的な人工結晶格子を作製し、電磁波を透過させるとき、波長と結晶周期が同程度になる周波数帯では、干渉作用により電磁波の進行が禁止される。この人工格子はフォトニック結晶と呼ばれ、禁止帯はフォトニックバンドギャップと呼ばれる。本研究では、高誘電率のセラミックス粒子を分散させたエポキシ系樹脂を用いて、三次元に展開するダイヤモンド構造型の結晶格子を作製し、高度情報通信用のマイクロ波を制御しうるフォトニック結晶の開発を目指している。結晶の作製には光造形法を応用した。セラミックス粉末を混合した光硬化性樹脂に紫外線レーザーを照射し、微小硬化領域を連続的に接合することで三次元構造を造形できる。今年度は、光造形法により作製したダイヤモンド型フォトニック結晶の三次元的な電磁波特性について研究を行った。 マイクロ波制御用フォトニック結晶を光造形システム(株式会社ディーメック製:SCS-300P)により作製した。エポキシ系の光硬化性樹脂に高誘電率セラミックス粒子として平均粒径5μmのチタニア粉末を混合した。結晶は寸法φ2×5mmの誘電体円柱を組み合わせてダイヤモンド構造とした。結晶の電磁波特性をネットワークアナライザー(日本ヒューレット・パッカード株式会社製:HP 8720D)により評価した。導波管にサンプルを挿入し、TE_<10>モードにおける電磁波の透過率を測定した。電磁波の入射方向はダイヤモンド構造における<100>,<110>,<111>方向とした。 光造形法によりチタニア分散型のダイヤモンド・フォトニック結晶を作製したところ、ミリメートルオーダーの精密な三次元構造が得られた。ダイヤモンド結晶における<100>,<110>,<111>方向に対して、電磁波の透過特性を評価したところ、結晶面間隔に対応した周波数帯域にフォトニックバンドギャップの形成が確認された。以上の結果から作製したフォトニック結晶は、電磁波の三次元的な伝播を制御しうることが確認された。
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