研究概要 |
銅微粒子分散ガラスを溶融急冷-熱処理法で作製するための最適マトリックスガラスの探索を行った.その結果,この方法で銅微粒子分散ガラスを作製するためのマトリックスガラスとしてリン酸塩系ガラスが適していた.リン酸塩系ガラスからの銅微粒子の析出と分散の形態について吸収スペクトル測定およびTEM観察により調べた.還元剤としてSnOのみを添加した50BaO・50P_2O_5+6Cu_2O+6SnO(mol%)ガラス試料について等温熱処理を行った.得られた試料の吸収スペクトル測定に基づいて時間-温度ー析出状態図(TTD図)を作製した.その結果,銅微粒子が単分散して析出する領域は結晶化温度付近の狭い領域のみであり,またTEM測定より粒径およそ20nmの銅微粒子が単分散していたが,折出量が少ないことがわかった.50BaO・50P_2O_5+6Cu_2O+6SnO(mol%)ガラスに還元剤としてSb_2O_3を添加した結果,ガラス転移点以下で熱処理を行うことが可能となり,直径約10nmで粒径の揃った銅微粒子が高密度で単分散した試料を得ることができた.さらに,銅微粒子の析出・分散の形態制御のため,酸化物ガラスからの銅微粒子の析出・成長機構について考察した.ガラス転移点以下の熱処理では,銅微粒子の粒子径は熱処理時間の1/3乗に比例して増大した.一方,ガラス転移点以上の熱処理では,その粒子径は熱処理時間の1乗に比例して増大した.TTD図と銅微粒子の析出・成長機構を明らかにすることで,銅微粒子の粒子径と分散状態の制御が可能となった.
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