研究概要 |
ガラスは,組成任意性を特徴に持っているため,組成により物性値を連続的に変化させることができる.しかしその反面,組成の組み合わせが多様であるため,所望の物性をもつガラスを開発することは困難である.そのため新しいガラス材料の開発を行なう際には,組成と物性の関係について系統的な研究を行い,材料設計指針となる組成パラメータを確立することが必要不可欠になる.そこで本年度では、ガラスおよびスラグから熱処理によって微細異相結晶相を析出させるために必要となる比熱について組成との関係を系統的に調査し,その組成パラメータの確立と支配因子の検討を行なった. 比熱測定用ガラスとして,ケイ酸塩,ホウ酸塩,およびリン酸塩系ガラスを選択した.各ガラスの比熱測定にはACカロリメトリー(真空理工(株)製)を用い,室温から840Kの温度範囲で測定を行なった. 各酸化物系ガラスの比熱を測定することで,系統的にガラス比熱のデータ集積を行なった.これら実測した酸化物系ガラスの比熱と組成の関係について,固体比熱の理論で用いられているデバイ温度を用いて考察した.その結果,実測した比熱をデバイ温度における比熱,温度をデバイ温度でそれぞれ規格化することで,組成に依らず1つの比熱温度曲線で表すことができること明らかにし,この関係式から酸化物系ガラスの比熱を組成より推定することに成功した.さらに,室温以上の温度域におけるガラス比熱の支配因子について考察を加えるため,低温域の比熱について提案されているガラス比熱の理論を用いて解析を行なった.その結果,室温以上の温度域において,1次元デバイ関数で表される網目形成酸化物の原子間結合力が,ガラス比熱を支配していることを見出した.
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