研究概要 |
気相重合は、現在の汎用プラスチックスの主力プロセスの一つであるが、30気圧、約100℃の流動層中の流動・伝熱・反応が相互に深くかかわった条件のため、反応器内現象の制御については、全く解明が進められていない。本研究では、これらを一つ一つ明らかにし、粒子間伝熱や付着力を考慮した現実的なシミュレーションに進むことをめざすことを目的としている。平成11年度に得られた結果は以下のとおりである。 (1)高温・高圧下でのポリプロピレン気相重合反応によるポリマーの成長過程が直接観察できる装置を開発し、得られた画像を解析することによって、個別粒子レベルでの反応挙動を直接的に解明することを試みた。マイクロスコープを用いて得られた生成ポリマー粒子のスナップショットから重合時間とともにポリマーが中心の触媒を取り囲むようにして成長する様子のビデオ撮影に世界で初めて成功した。また、未反応核モデルに基づく反応速度式を導出し、粒径の経時変化を実験値と比較した結果、実験値とモデルの成長速度がほぼ一致していたことから、プロピレン気相重合反応による粒径の経時変化が本モデルで表せることが明らかになった。(化学工学会第65年会発表予定) (2)赤外線熱画像装置を用いて粒子表面の温度分布の径時変化を測定し、粒子衝突時の粒子間伝熱の直接測定を行った。粒子衝突(接触)面の温度分布の測定は、粒子ーサファイアガラス板衝突をサファイアガラス越しに観察することにより行った。粒子には、直径20,10,5,3,1mm、材質Al,Cu,Pb,真鍮を用いた。測定されたサファイアガラスと粒子表面の温度差分布から熱伝導支配領域と対流支配領域を求めた。直径20mmの場合、熱伝導領域が直径1.84mで粒子径の約9.2%であった。また、最も伝熱速度の大きい部分が、粒子間のガス膜が最も薄い場合に観察された。(2000 China-Japan Symp.on Fluidization発表の予定)
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