研究概要 |
気相重合は、現在の汎用プラスチックスの主力プロセスであるが、30気圧、約100℃の流動層中の流動・伝熱・反応が相互に深くかかわった条件で行われるため、反応器内現象については、全く解明が進められていない。本研究では、これらを一つ一つ明らかにし、粒子間伝熱や付着力を考慮した現実的なシミュレーションに進むことをめざすことを目的とした。平成12年度に得られた結果は以下のとおりである。 (1)平成11年度に作成したポリマー粒子の直接観察装置を用いて、詳細な粒子成長データを得(Fluidization X,accepted,2001)、それに基づいて解析を行った。まず初めにプロピレンモノマーがポリマー粒子中を拡散するとき、粒界拡散抵抗が無視できるとし、ポリマー粒子にある小粒子(グレイン)内の拡散のみを考えたモデル展開を行った。総括反応速度式の粒径が大きい場合の近似を行い、反応時間の1/3乗に粒径が比例する3乗則モデルを導出した。このモデルにより実験値と比較を行ったところ、比較的良い一致が得られたが、初期粒径によって拡散抵抗が異なる結果となった。(化学工学会第65年会発表) (2)そこでポリマー粒子中のプロピレンモノマーの粒界拡散を考え、粒子中のモノマー濃度に半径分布を考慮し、さらに粒子中のグレイン成長の半径方向分布も考慮した新たなモデルを導出し、数値計算により解を求めた。その結果、異なる初期粒子径に対しても整合性のある拡散抵抗、反応速度定数で実測値との良好な一致が得られ、本モデルの有効性を示すことができた。(化学工学会第66年会発表予定) (3)DEMシミュレーションのコードに組み込む付着力として液架橋力を考えるが、粒子接触時には粒子間に存在する液により固体接触が妨げられ潤滑効果も生じる。本研究ではこの潤滑効果を組み込み、粒子運動に及ぼす影響を検討した。その結果、粒子の回転方向運動は潤滑効果により大幅に減少し、並進方向運動はより活発になることがわかった。(Powder Technology,Vol.113,page 287-298にて発表) 以上、本研究により、粒子レベルでの基礎現象把握に基づいて触媒開発やリアクターのスケールアップを行う新しい気相重合反応工学の基礎を確立できた。
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