研究課題/領域番号 |
11305061
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
彌田 智一 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90168534)
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研究分担者 |
松下 未知雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80295477)
阿部 二朗 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (70211703)
河合 是 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00087298)
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キーワード | レドックス制御 / 機能性ラジカル / 分子磁性 / 光誘起安定ラジカル対 / ヘキサアリールビスイミダゾール / ローフィルラジカル / 二量化反応 / ラジカル対の分子構造 |
研究概要 |
本研究では、光電気化学的にレドックス制御できる機能性ラジカルを強い相互作用のもとに共役組織化し、その組織体構造と多段階レドックスの相関関係を理解するとともに、ラジカル生成の光電気化学的制御を応用した刺激応答性の分子磁性及び導電性の発現を目的としている。機能性ユニット間に刺激応答性リンカーを組み込むことで、刺激応答性の分子磁性及び導電性の発現が期待できるが、相互作用ユニットとして光誘起安定ラジカル対を用いる新しい試みに挑んだ。今年は準備段階として、ヘキサアリールビスイミダゾール(HABI)に紫外光照射することで生成する光誘起安定ラジカル対の電子状態について実験および理論的検討を行った。HABIのハロゲン置換体であるo-Cl-HABI結晶に室温で長時間紫外光を照射してもフォトクロミズムを示さないが、液体窒素温度下で紫外光照射を行うと、ローフィルラジカルの生成に伴って結晶の色は淡黄色から紫色に変色する。この条件下ではラジカル二量化反応は抑えられ、ローフィルラジカルは安定に存在し続けるが、160(K)以上に昇温すると二量化反応の進行によりゆっくりと照射前の淡黄色に戻る。我々は、103(K)で紫外光照射したo-Cl-HABI単結晶のX線構造解析により光誘起ラジカル対の直接観測にはじめて成功した。これまでに、ESRスペクトルによって三重項ラジカル対の存在は知られていたが、ラジカル対の分子構造をはじめて明らかにすることができた。 2Kで紫外光照射された単結晶試料の温度可変ESRスペクトル測定からは興味深い結果が得られた。2Kで生成した三重項ラジカル対Aは昇温に伴い不可逆的に、他の三重項ラジカル対Bに変換することがわかった。この二種類のラジカル対AおよびBは大きく異なるD値を持つことから、二つのローフィルラジカルの相対的空間配置が異なることが示唆された。またキュリープロットから、ラジカル対Aの基底三重項状態、ラジカル対Bの基底状態は一重項状態であることを見いだした。
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