大環状化合物を反応場あるいは反応基質とする新規ホスト分子の合成と応用

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11305063
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 西村 淳 群馬大学, 工学部, 教授 (10107352)
• 研究分担者: 中村 洋介 群馬大学, 工学部, 助手 (60261864) ; 岡田 行弘 群馬大学, 工学部, 助教授 (80211118)
• キーワード: クラウノファン / γ-シクロデキストリン / 液-液抽出実験 / 重金属イオン / [2+2]光環化反応 / スチレン誘導体 / ポリエーテル環 / フラーレン

研究概要

ソフトな錯化部位としてピリジン環をクラウノファンのポリエーテル環内に有する化合物を、スチレン誘導体の[2+2]光環化反応により合成した。これらの機能評価を重金属イオンの液-液抽出実験を通して行ったところ、鉛イオンを若干抽出するものの、銀イオンに高い選択性を示した。
2個のヒドロキシル基をベンゼン骨格上に有するクラウノファンを従来の[2+2]光環化反応により合成した。これらのヒドロキシル基にメチレンを介してピリジン環を導入し、液-液抽出実験の試剤として使用した結果、銀イオンをこれまでにない高効率かつ独占的に抽出することが確認された。
第二級および三級アミノ基を有するスチレン誘導体の[2+2]光環化反応は、スチレン残基の励起一重項がアミノ基と反応するため、通常の方法ではクラウノファンを合成できない。そこで、アンモニウム塩の水溶液としてのち、両残基を隔離する目的でγ-シクロデキストリンを添加し、光照射したところ、良好な収率で合成することに成功した。さらに、得られたクラウノファンは銀イオンに高い選択性を示した。
ベンゼン環に硫黄原子が直接結合したクラウノファンを合成し、重金属イオンの液-液抽出実験を行った結果、効率良くかつ独占的に銀イオンを抽出することが確認された。
フラーレン表面にクラウンエーテル環を配置したクラウノフラレーンを設計合成し、アルカリ金属イオンに対する錯形成定数を求めたところ、ジベンゾ-18-クラウン-6よりも高いカリウム選択性を有するイオノファーを得た。

研究成果

• [文献書誌] S. Inokuma, K. Kimura, T. Funaki, J. Nishimura: "Synthesis of Pyridinocrownophanes Exhibiting High Ag^+-Affinity"Heterocycles. 54・1. 123-130 (2001)
• [文献書誌] Y. Okada, M. Kaneko, J. Nishimura: "Chloromethylation of syn-[2.n]metacyclophanes and application loward multi-bridged cyclophane synthesis"Tetrahedron Lett.. 42. 25-27 (2001)
• [文献書誌] S. Inokuma, K. Kimura, J. Nishimura: "Synthesis and complexation of azacrownophanes : The cyclodextrin catalysis of the photochemical cyclization reaction"J.Inclusion Phenomena. 39. 35-40 (2001)
• [文献書誌] Y. Okada, M. Kaneko, J. Nishimura: "The formylation of syn-[2.n]metacyclophanes and application toward multi-bridged cyclophane synthesis"Tetrahedron Lett.. 42. 1919-1921 (2001)
• [文献書誌] Y. Okada, M. Mizutani, F. Ishii, Y. Kasai, J. Nishimura: "Synthesis and characterization of calixarene analogs locked in the cone conformation by the dimerization of syn-dihydroxymetacyclophanes as a building block"Tetrahedron. 57・7. 1219-1227 (2001)
• [文献書誌] Y. Nakamura, J. Nishimura (他5名): "First isolation and characterization of eight regioisomers for [60]fullerene-benzyne bisadducts"Org.Lett.. 3. 1193-1196 (2001)
• [文献書誌] Y. Nakamura, T. Fujii, S. Inokura, J. Nishimura: "Calixarene : Synthesis, Theory and Applications"Kluwer Academic Publishers. 219-234/683 (2001)